トップページ > ブログ > 生前整理は「物を減らすこと」ではありません ─ 現場で学んだ、整理と寄り添いの本質

 

終活アドバイザー向けの勉強会で、「生前整理から遺品整理まで」をお話させていただきました。

その中から、一部をお伝えします。

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「そろそろ片づけた方がいいんじゃないかしら」

そう思って、親の家に行ったことはありますか。

あるいは、利用者さんや相談者さんの暮らしを見て、「もう少し整理すれば楽になるのに」と感じながら、どう声をかければいいか迷ったことは。

 

終活アドバイザーとして、また整理収納アドバイザーとして、私はこれまで多くの現場に立ち会ってきました。

その中で、ずっと気になってきたことがあります。

一番多いトラブルの原因は、悪意ではなく善意だということです。

 


「捨てましょう」という言葉が、扉を閉じる

生前整理のお手伝いをするとき、言葉の選び方ひとつで場の空気が変わります。

「これ、もう捨てましょうか」

この一言が、どれほどの重さを持っているか。整理の現場に立ったことのある方なら、感じたことがあると思います。

私たちにとっては「古いもの」に見えても、その方にとっては、何十年もそこにあり続けたものです。子育て中に使っていたもの、亡くなったご主人が大切にしていたもの、旅行の思い出、誰かからもらったもの。

「捨てる」という言葉は、その歴史を一瞬で否定する力を持っています。

ところが「選びましょう」に変えるだけで、まったく違う対話が始まります。

「捨てる」は受け身で、外から決められる感覚です。「選ぶ」は能動的で、その方が主役になれる言葉です。

 

この違いを意識するようになってから、整理の場が驚くほどスムーズになりました。

相手が笑顔で話し始める。「これはね、〇〇のときに…」と語り出す。整理しながら、その人の人生の話を聞かせていただける場になっていく。

整理とは、物を減らす作業ではなく、その人の人生と価値観を確認するプロセスなのだと、現場を重ねるたびに実感しています。


「誰のための整理か」という問いを、忘れないために

もうひとつ、現場で繰り返し目にしてきたことがあります。

整理が難航するとき、その多くに共通していることがありました。

「誰のための整理か」が、途中でずれていくのです。

最初は「お父さんが動けるうちに」と始めたはずが、気がつくと「子ども世代が管理しやすいように」になっている。

「本人のペースで」と言っていたのに、いつの間にか「早く片づけなければ」と焦っている。

これは、誰かが悪いわけではありません。家族には家族の事情があり、時間的な制約もあります。「早くしなければ」という気持ちは、本当に自然なことです。

 

でも、整理される側の方は敏感に感じ取ります。

「これは私のためじゃなく、子どもたちのために片づけさせられている」

そう感じた瞬間に、心が閉じます。それ以上は進まなくなります。

だから私は、関わる前に必ず確認します。

本人の意思はどこにあるのか。

今、この方は何を一番大切にしているのか。

家族関係はどうなっているか。

体力的に、今日はどこまでできそうか。

そして何より、これは誰のための整理なのかを、最初に関わる全員で確認することを大切にしています。


遺品整理の現場で、私が学んだこと

遺品整理は、さらに特別な現場です。

悲しみの中にいる遺族の方と向き合いながら、実務として整理を進めなければならない。この両方を、同時にやる必要があります。

現場でよく出会う言葉があります。

「早く片づけなければ、と思っているんですけど…なかなか手がつけられなくて」

この「なかなか手がつけられない」の中には、罪悪感、悲しみ、迷い、疲れ、様々なものが混じっています。

こういうとき、私は解決策をすぐに提案しません。

まず聴きます。

「そうですよね。急がなくていいですよ」

それだけで、ほっとされる方がたくさんいます。

実は、遺品整理の時間は「故人との最後の対話の時間」になりえます。一つひとつの品を手にとりながら、「お父さんはこれが好きだったんだな」「こんなものを持っていたんだな」と、改めてその人を知っていく時間。

それが悲しみを和らげ、やがて前へ進む力になっていく。

整理は、終わりではなく、次のはじまりでもある。現場から、そう学んできました。


「動けるうちに動く」は、本人だけへの言葉ではない

生前整理から遺品整理まで、どの段階にも共通する言葉があります。

「動けるうちに動く」

これはよく、ご本人への声かけとして使われます。でも私は、関わる私たちへのメッセージでもあると思っています。

適切なタイミングで、適切な関わり方をする。早すぎても、遅すぎても、違う問題が生まれる。

終活アドバイザーとして、整理収納アドバイザーとして、現場でずっと考え続けてきたのはそのことです。

 

どう声をかけるか。

どこまで関わるか。

何を言わずにおくか。

整理の技術は、学べば身につきます。でも、人への関わり方は、現場を重ねながらしか磨けない。

この記事が、現場に立つ方や、これから関わりたいと思っている方のヒントになれば嬉しいです。

 


セミナー・講演のご依頼について

「生前整理から遺品整理まで」をテーマにしたセミナーを、終活アドバイザー向け・一般の方向けに行っています。

企業・団体・施設・地域のコミュニティなど、様々な場でお話しさせていただいています。

ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。